めがね組合ブログBlog
川端秀仁先生の講義
今日のお勉強は、眼科学&眼鏡学
知っておくと便利なメガネ用語をユル〜く解説
今回は、メガネ関連の用語をご紹介します。
そういうのって、なんだか面倒…と思うかもしれませんが、むしろ逆ってこともあるんです。
メガネ以外の例で考えてみましょうか。
「目の周りや耳、四肢などが黒くて他の部分は白い四川省に生息するクマ」
なんだか回りくどい表現ですよね。それは「パンダ」という名称・用語を使っていないから。
つまり用語がわかれば会話でも文章でも、回りくどい表現を回避できるんです。すると当然、伝わりやすくなるというわけ。ですから、どんなジャンルであれ、最小限の用語は知っておくと便利なんです。
そして、もうひとつ。用語と一緒に裏話的な情報もどうぞ。たとえば…
パンダの手には5本の指のほか、2本の指らしくものがあって、竹や笹を握りやすい
とか、
せっかく握りやすくなった竹や笹だけど、そもそもパンダの食べ物に向いていないらしく、多くは消化できずに排泄されてしまう。だから一日中モグモグせざるをえない。
いかがですか? 次にパンダに会った時…って、まあ道端で会うことはないので、動物園かテレビだと思うのですが、見る目がちょっと変わると思いませんか?
パンダほどじゃないかもしれませんが、メガネも同じこと。用語の背景には、時々トピックが潜んでいるんです。
さて、パンダの話はここまで。いよいよ本題、メガネの用語集【基礎編】をお届けします。
覚えておくと、いつかは役立つメガネ用語をご紹介
前は「フロント」。
横は「サイド」じゃなくて「テンプル」。
「フロント」。これ、分かりやすいですよね。メガネフレームの前側の部分の総称で、別名は「前枠」。
じゃあ残りの部分は「サイド」? いえいえ、そうじゃないのがメガネ用語の厄介なところ。
「フロント」に対して、横の部分は「テンプル」と呼びます。
メガネ関連のいろんな用語の中で1つだけ覚えるとしたら、個人的には「テンプル」をおすすめしたいところ。
別名は「つる」なのですが、不思議なことに「つるの部分」「つるのところ」なんて言い方をするケースが多くいんです。なんだか回りくどくないですか? いっそのこと、「テンプル」って用語を覚えちゃいましょうよ。そのほうが話が早いから! というのがおすすめの理由。
ちなみにテンプルは「こめかみ」を意味する”temple”から来ていて、もちろん英語圏でもその呼び方をしています。そんなの当たり前…と思うかもしれませんが、メガネ用語の中には英語由来のくせに英語圏で通用しないものもあるんです。ファストフードの「テイクアウト」が英語圏では通用しないのと同じですね。ちなみにこちらの正解は “to go” や “take away” です。
よく知られている「リム」の
知られざる事実。
レンズを保持する「輪」の部分を、リムと言います。英語圏でも “rim” で通用します。
リムが上半分だけのスッキリしたデザインの呼び方なのですが、日本では「ナイロール」が一般的。一方、英語圏では “half rim” 。実はナイロールって、元々、フランスのエシロール社が保有する商標だったんです。日本国内で無断で「ナイロール」を名乗り、裁判で負けた事例があるんですけどね。それでも「ハーフリム」じゃなくて「ナイロール」という呼び方が定着しちゃいました。電子オルガン全般を「エレクトーン」って呼んじゃうお国柄ゆえのことかもしれませんね。
左右のリムを繋いでいる部分の呼び名は「ブリッジ」。ブリッジには、繋ぐ以外にも役割があります。
まず、デザイン。ブリッジが高い位置についているか、それとも低めの位置についているか。掛けた時の印象が変わるんです。あと、上向きのアーチなのか、それとも下向きのアーチなのか、はたまた直線気味なのかでも印象は変わります。さらには前方への突き出し量によって、フレームの立体感に差が出たりするんです。いずれも数ミリ程度の差なんだけど、お顔の印象が変わることも。メガネフレームって、思いのほかデリケートなんです。
それからブリッジには、フロントの強度を出すという役目もあるんですが、これ、話すと長くなりそうなので、また別の機会にご説明しますね。待ちきれない方は、どうぞ組合加盟店の店頭でお尋ねください。どうぞお気軽に!
覚えなくていい用語だけど
念のためご紹介。
正直申し上げます。この用語は、覚えなくても大丈夫です。
ただひとつだけ、ヨロイや智の関連で知っておいてほしいことがあるんです。
レンズ外側の張り出した部分を、メタルフレームでは「ヨロイ」、プラスチックフレームでは「智」と呼ぶのが一般的。
デザイン次第で張り出し方は様々。すると何が起こるかと言いますと…。
レンズの横幅やブリッジ幅が同一の2本のフレームがあるとします。メガネフレームはレンズの横幅とブリッジ幅でサイズ表記しますから、この2本は同じサイズということになります。でも一方は智が大きく張り出していて、もう一方は智がほとんどないデザイン。すると…表記の上では同サイズなのに、フロント全体の幅は異なるものになるんです。結果として、サイズ表記だけを頼りにフレームを選ぶと、顔に対してちょっと大き買った、またはちょと小さかった…という事態もおこりうるわけです。だから、あらゆるものがネット通販で買える時代ですが、メガネフレームは店頭で試着してお買い上げになることをおすすめします。
サイズ表記については、また別の機会に、詳しくご説明しますね。
「丁番」は、メガネフレームにおいて、とっても大事なパーツ。
他のジャンルでは「蝶番」と書くことも多いと思うのですが、メガネ用語としては「丁番」と書くのが定番。なぜかと言いますと…。考えられる理由は3つ。
理由その1 鼻パッドのほうで「蝶」という字を使っているから。
理由その2 「丁」のほうが画数が少ないので書くのが楽。
理由その3 蝶番=蝶のようにヒラヒラ軽く動くイメージ。メガネフレームの場合、適度な抵抗感があるのが望ましい。だからあえて「蝶」ではなく「丁」の字を当てた。
どの理由が正解なのか、あいにく不明なのですが、皆さんのお考えはいかがでしょう?
メガネのフィット感にも関わる
お鼻まわりの用語。
鼻パッド、ノーズパッド、パッド、鼻当て。どの名前で読んでいただいても、日本全国で通じると思います。
「蝶」は一対のパッドの見た目に由来する呼び方だと思うのですが、名付けた方にセンスに感服します。一般的には通じにくい呼び方ですけど…。とはいえフレームの製造現場では「蝶」「箱蝶」「貼蝶」などの言葉をわりと普通に使っています。
ちなみに箱蝶は、メタルフレームで一般的なパッド。後述するクリングス先端についた箱部分でネジ止めする仕様の鼻パッド。
貼蝶はプラスチックフレームに多い仕様。フレームとパッドが一体のように見えますが、後から貼っていることが多いんです。
ちなみにメタルフレームの鼻パッドでポピュラーな素材はCP(セルロースプロピオネート)。そのほかにシリコン、形状記憶樹脂、エラストマー、コーン、チタン…実はいろんな素材を使ったものがあるんです。
メタルフレームの鼻パッドを付けるニョロっとした部分の呼び方は「クリングス」または「クリングスアーム」。鼻パッドを固定するための箱が付いていることから、「箱足」と呼ばれることもあります。アーム=腕と言ったり、足と言ったり、その辺りの一貫性のなさは、どうぞ笑って許してあげてください。
ちなみに一般的な呼び名=クリングスは、しがみつくという意味の英単語 “cling” に由来するもの。なのに、このパーツの英語名は “pad arms” 。”cling” という言葉を使わないんです。日本では誰がどんな経緯で、こんなに難解な名前を付けたんですかね?
このクリングスですが、いくつかの形状があります。お手持ちのメガネでご確認ください。たぶんクネクネと三次元的な曲線を描いたものが付いているんじゃないですかね? このタイプは通称「スネーク」(グースネック)。様々な微調整を容易にするために生まれた形状です。ただし、欧米人の顔を思い浮かべていただくと分かりやすいのですが、鼻根が高い場合はクネクネが邪魔になってしまう場合もあるんです。だから海外ブランドでは、もっとシンプルに折り返しただけの「U字」タイプを採用していることが多かったりするんです。
あと、近年は貼蝶ではなくクリングス仕様のプラスチックフレームも多くなっています。これは、調整しやすい=フィット感を高めやすいという理由によるもの。まつ毛や頬骨がメガネに当たってしまう方は、試してみる価値アリですよ。
時代と関係する
テンプルまわりの用語。
プラスチック製のテンプルの中に入っている金属製の芯の呼び名は「芯金」で、素材はチタンか洋白が一般的。
プラスチックフレームによく使われるアセテートという素材は柔軟なので、形状を保持するために芯金を入れているんです。
アセテート以前にポピュラーだったセルロイドは、素材自体に十分な張りがあるので、芯金のない仕様のものも存在します(ノー芯といいます)。また、近年増えている超弾性素材を使ったフレームも、その弾力性を活かすため、芯金を入れないのが一般的。注意点としては、ノー芯のセルロイドはテンプル部分でフィッティングの調整ができるけれど、超弾性素材はテンプル部分単独では調整できないことが多いこと。このあたりが気になる方、どうぞ組合加盟店の店頭でお尋ねくださいね。
お待たせしました。いちばん謎なメガネ用語の登場です。メタルフレームのテンプルの先端、耳に当たる部分にプラスチック製のカバーが付いていますよね。このパーツの名前は「モダン」。モダンという言葉自体がなんだかダサいせいか「先セル」と呼ぶこともあります。が、どちらにしてもあまり洗練された呼び名ではないようで…。ちなみに英語での呼び方は “temple tip” 。
「先セル」は、なんとなく理解できますよね。先端に付いているセル(現在ではセルロイドは使っていませんが)なので、先セル。問題なのは「モダン」のほう。名前の由来は、こうです。
昔のメガネのテンプルは、先端までメタルが剥き出しだったんです。そのままだと食い込んで痛いから、カバーを付けてみようか。なんだか見た目もいいし。このカバー付きのテンプル仕様を、おそらく製造現場だけのことですが「モダン仕様」略して「モダン」と呼んでいた。その呼び方が現在まで生き続けている。
ちなみに近頃のクラシックテイストのメタルフレームでは、モダンが付いていないものも多く存在します。でもご安心を。素材面もフィッティングに対する考え方も進化していますから、食い込んで痛いことは少なくなっています。
最後に、余談です。
お好み焼きの「モダン焼き」。あれは “modern” に由来するものではありません。なんと「盛りだくさん」を略して「モダン」なんです。
まとめ
以上、メガネの用語集【基礎編】をお届けしました。長時間のお付き合い、ありがとうございました。
メガネってシンプルなプロダクト。シンプルだからこそ、一つひとつのパーツがじっくりと考えられているんです。だから呼び方だけじゃなくて、そのパーツが持つ意味合いまで語り始めると、膨大なものになっちゃうんです。そこをぐっと抑えつつお届けしたつもりですが、それでもやっぱり長くなっちゃいましたね。
パンダから始まった、今回のお話。メガネの聖地=福井県鯖江市には、日本有数のレッサーパンダ繁殖数を誇る西山公園があるんです。
と、最後もパンダの話で締めさせていただきますね。
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